しあわせ研究所が考えるベーシックインカム ▶▶

見えない格差が見えない訳

この記事は約9分で読めます。

しあわせ研究所にようこそ☆


この記事は前編後編に分かれています。


見えない格差が見えない訳 前編

しあわせ研究所は「見えない格差」により少子化が始まったと考えています。

そして、所得の高い人や資産のある人が「見えない格差」に気が付かないのは今の税制と社会保険の仕組みもあると考えています。

所得の低い人達は社会保険の負担がとても重く、税金の負担はあまりありません。

特に所得税の負担は所得の少ない人ほど少なくなります。

反対に所得の高い人は高いほど税金の負担が重く社会保険の負担は少なくなります。

そのため所得の高い人達は所得の低い人達が社会保険料の負担苦しんでいるのが解らないのです。


フロントページに戻る


所得の高い人は税金が高く、所得の少ない人は社会保険料が高い

所得の高い人達は税金が一番高く、次に住民税で社会保険料が一番少なくなります。

反対に年収600万円以下の人達は所得の低いほど社会保険料の負担が多くなります。

次に負担が多いのは住民税で所得税の負担はほんのわずかです。

下のグラフを見てみて下さい。このグラフは年収別に給料から引かれる税金や社会保険料の構成比を表したグラフです。

所得税と住民税は平均値ですので、家族構成など控除額により金額が異なります。
所得税は平成30年 国税庁 民間給与実態統計調査より作成. 住民税は平成30年 総務省 市町村税課税状況等の調より作成

ムク
ムク

林さん、どの年収でも社会保険料と住民税と所得税を合わせると100%になっているね。

  林
  林

そうだよ、給料から必ず引かれるのが社会保険料と住民税と所得税なんだけど、このグラフは年収別に何を何%引かれているかを表しているんだ。たとへば、年収500万円の人を見てみて、赤い丸が付いているところ。

ムク
ムク

うん、社会保険料が72.7%、住民税が16.2%、所得税が11%になっているところだよね。


年収500万円の人は年間で105万円位給料から税金や社会保険料を引かれています。

そのうち
社会保険料が76万4千円で72.75%、

住民税が17万6千円で16.25%

所得税が11万5千円で11%

ということを表しているグラフです。


ムク
ムク

所得の少ない人達は社会保険料が多くて所得の多い人ほど税金が高くなっているね。

  林
 林

その通りだよ。


そうなんです。社会保険料の割合は所得の少ない人ほど多くなります。

私たちが長生きになって社会保険料の負担が増えてしまったせいです。

反対に所得の高い人は税金が高くて社会保険料の負担はほんの少しだけです。

これは社会保険料に限度額があるためです。

年収800万円以上の人達の厚生年金の保険料はみんな同じ金額です。

年収が1億円あっても同じ金額です。1円も保険料が増えません。

健康保険も限度額が違いますが同様です。

そのため、所得の高い人は高い人ほど、

所得の少ない人達が社会保険料に苦しんでいることがわかりません。

所得が高くなればなるほど社会保険の負担割合は少なくなり、税金の割合が多くなるからです。

このグラフの社会保険料には会社負担の社会保険料が入っていません。

そのため、実際の社会保険料の負担はもっと多くなります。2倍以上になります。

税金(所得税)を減らしても所得の少ない人には恩恵がない

ムク
ムク

わかった。所得の高い人は「税金」が気になり、あまり所得の高くない人達が、高齢化で負担が多くなった「社会保険料」に苦しんでいるのがよくわからないんだ。

林

その通り。
だから見えないんだよ!


そうなんです。所得の高い人は所得の少ない人達が社会保険料の負担に苦しんでいることがわかりません。

その上に所得の高い人達は無理をしなくてもお金がたまっていくので老後の資金も気にならなりません。

所得の高い人達の気になるのは「税金」つまり、所得税のことだけです。

そのため所得税を減税すればみんなの暮らしが良くなると考えています。


ムク
ムク

社会を動かしているのはお金持ちだから、所得の少ない人達が社会保険料の負担に苦しんでいるのがわからないんだね。

林

そうなんだ。「所得税」が減って喜んでいるのはお金持ちだけなんだよ。

ムク
ムク

確かにそれではちゃんとした政策が立てられないね。所得税が減っても所得が少ない人の生活は変わらないもんね。

   林
  林

そうなんだよ。そのうえに国は何かにつけ消費税を上げているので、所得の低い人達の生活は苦しくなる一方なんだよ。

社会保険料の負担は所得税より多い

ムク
ムク

それじゃあ、所得の多い人にもっと税金を払ってもらって、そのお金を社会保険料に回したらどう。

林

そうは簡単にいかないんだよ。下のグラフを見て。

この表は2019年の社会保険料、消費税、所得税、住民税の歳入額です。

見てわかるように社会保険料は消費税の3倍以上ある71.5兆円です。

こんなに多く私たちは負担しています。


ムク
ムク

え!社会保険料ってこんなに多いの!

  林
  林

そうなんだ。でもこれは保険料収入だけで、まだ30兆円位足りないんだよ。国は不足分を補うと言って、消費税を上げていくから、所得の低い人達の負担は増えるばかりなんだよ。

少子化の一番の原因は社会保険料

少子化の原因は1つではありませんが、しあわせ研究所は社会保険料と老後の不安が1番の原因だと考えています。

老後の不安は「老後の2千万円問題」に象徴されていて、よくご存じだと思います。

そして賃金が上がらないことや消費税の増税が少子化を後押ししています。

自営業の人達は国民健康保険

ムク
ムク

自営業で働く人はどうなの?

   林
  林

もちろん、自営業で働いている人達も会社員と同様に社会保険料の負担に苦しんでいんでいるんだ。


自営業で働く人の年金は1万7千円位で、夫婦2人で3万4千円位と会社員より少ないけれど将来は基礎年金しかもらえません。

しかし、国民健康保険の保険料は高いと実感しているはずです。

しかも会社員と違い家族が増えるほど高くなります。

6月頃になり役所から国民健康保険や住民税の通知書を見て、自営業者の人達は「なんて高いんだ」と実感しているはずです。

特に家族が多い人は実感しているはずです。

国民健康保険料も限度額があるので所得の高い自営業者にはそんなに負担になりません。

所得税だけがお金持ちを苦しめる

また、所得の低い人は所得税よりも住民税の方が高いのも実感しているはずです。

当たり前です。
所得税の最低税率は5%なのに住民税は一律10%だからです。

私たちの払う税金や社会保険で収入が多くなるほど税率が高くなるのは所得税だけです。

これを累進課税るいしんかぜいと言います。一番公平な税金です。

お金持ちを苦しめている税金は累進課税るいしんかぜいである所得税だけです。

反対に収入の少ない人は所得税だけが安くなります。

お金持ちの税金を増やしても数兆円

ムク
ムク

社会保険料の収入に比べると、お金持ちが多く払っている所得税は少ないね。企業が払っている所得税と併せても20兆円位しかないんだね。社会保険料の1/3もないんだ。消費税よりも少ないね。

  林
  林

そうなんだよ。高額所得者の税金を増税してもせいぜい3~5兆円位にしかならいないからね。全然足りないんだ。ただ、中間層の所得税や法人税、配当所得を上げれば、あわせれば15兆円以上増やすことが可能なんだけど、簡単にはいかないだろうね。中間層の所得税を増やすと選挙に負けるし、日本では法人税を増やすと株主に払う配当金が少なくなるからね。配当所得は2重課税の問題もあるしね。やっかいなんだよ。

ムク
ムク

15兆円でも足りないの?

  林
  林

うん、少子化がなく平均寿命が85才までだったら、15兆円で足りるはずなんだ。実際の赤字国債は10兆円位だからね。でもこれから働く若い人が減っていくから将来は間違いなく足りなくなるんだよ。高齢化もペースが落ちているけどまだ進むからね。それに中間層を増税したら少子化はもっと進むしね。

社会保険料の半分は会社負担

ムク
ムク

林さん、ひとつ気になることがあるんだけど、会社員の人が払う社会保険料って、会社が半分以上払ってくれるから、負担はこのグラフやその前のグラフの半分じゃないの?

  林
  林

その通り、よく気が付いたね、ムク。実際に月収30万円の人が給料から引かれているのは9万円じゃなくて、半分の4万5千円位だけだよ。

ムク
ムク

なんで会社が半分負担するの、国が決めているから?事務負担が増えるだけだよね。

  林
  林

その通りだね、もしムクが社長だったら会社負担の4万5千円も給料にしたいと思はない。つまり、給料を34万5千円にして社会保険料を全部給料から引いた方がいいと考えるよね?その方が給料をいっぱい払っているように見えるからね。

ムク
ムク

確かにそうだね、会社は国に保険料を払うより、働いている人に給料として払いたいよね。30万円より34万5千円の方が給料をいっぱい払っているように見えるもんね。社会保険料が高いのは会社のせいじゃなくて国が決めたことだもんね。

半額負担の保険料が見えない負担

  林
  林

そうなんだよ。そして、それが格差を見えなくした一番の原因なんだよ。次のグラフを見てみて。


このグラフは年収別に給与から引かれる実際の税金と社会保険料の給料に対する割合を表したグラフです。

社会保険料率は年金や健康保険の他に雇用保険や労働保険を入れているから今までの表と率が少し違います。

赤い折れ線グラフが社会保険料と税金を足した給料に対する割合です。

よく言う控除額の割合になります。給与から控除額を引いたのが手取り金額になります。

年収150万円の人は平均して給与から19.1%の約28万6,500円引かれているという意味です。

年収4,000万円の人は39%ですので、平均して約1,560万円引かれています。

ムク
ムク

所得の少ない人ほど給与から引かれる金額の割合が少ないね。

  林
  林

その通り、給料が高い人ほど給料から引かれる控除額の割合が高くなっているよね。でも、次のグラフを見て。

次のグラフは会社負担分の社会保険料を給料と考えて、働く人が社会保険料を全額負担した時のグラフです。

しあわせ研究所では会社負担分の社会保険料を「見えない給与」又は「見えない保険料」と呼んでいます。

社会保険料率は年金や健康保険の他に雇用保険や労働保険を入れているから今までの表と率が少し違います。

ムク
ムク

収入の少ない人の控除額はすごく増えるけど、収入の多い人の控除額はあまり変わらないね。少ししか増えない。所得の低い人も高い人とそんなに変わらなくなるね。

負担が見えないから不満を言わないpart 1

  林
  林

その通りだよ。ねえムク、もしこのグラフのように、社会保険料を半額ではなく、全額を給料から引かれたら収入の少ない人達は不満を持つと思わない。年収150万円の人は32.2%だから48万3千円も引かれるんだよ。

ムク
ムク

確かに、年収150万円の人が給料から直接50万円近く引かれたらきついよね。「高すぎますよ、何とかして下さい」と言いたくなるね。

  林
  林

そう、それが国の狙いだとしあわせ研究所では考えているんだよ。

ムク
ムク

え!どういう意味?不満を持つ人を少なくするため?

  林
  林

その通りだよ。社会保険料の全額を給料から直接引けば、「高すぎる」と不満を持つ人がもっと増えると思うよね。でも今の制度みたいに会社が半分負担しているように見えれば、不満が言いづらくなると思わないかい?


フロントページに戻る


コメント

タイトルとURLをコピーしました